京都の三大祭といえば、5月の葵祭、7月の祇園祭、そして10月の時代祭である。ただし、葵祭と祇園祭は古都の祭りらしく千年以上の歴史を誇っているが、時代祭はわずか110年ほど前の明治28(1895)年に始まった、いわば新参者。それがなぜ、三大祭の一つにあげられるのか。その答えは、祭りの始まりの経緯にある。
激動の幕末、明治維新から30年近くの時を経て、京都の町も平穏を取り戻していた。とはいえ、「都」は東京に移ったまま。京都の人々は、天皇が「ちょっと行ってくる」と言って東京に行ったので、すぐ戻ってくるのだと信じていた、という話があるが、現実の京都はすでに古都。そんな、いささか沈滞ムードのときに浮上したのが、明治28年、つまり平安遷都1100年目というメモリアルイヤー。その大きな節目の年に、明治の新時代にふさわしい大神社を創建しよう、という大構想が生まれた。今風に言えば「町おこし」だろうか。そうして明治28年3月に創建されたのが、修学旅行でもおなじみの平安神宮である。
桓武天皇が長岡京から京都に都を移したのが「鳴くよウグイス平安京」で年号を覚えた794年。この京の都の最初の天皇である桓武天皇を祭神に平安神宮は創建され、昭和15(1940)年には、京都最後の天皇である孝明天皇を合祀(ごうし)した。
時代祭は、この平安神宮創建を奉祝し、記念して始められた祭り。従って、毎年、祭りの日は平安遷都の日である10月22日。祭りのコンセプトは、京都が都であった千年余の歴史を彩る風俗を、京都伝統の技と知恵を結集して再現しようというもの。つまり、時代行列である。
行列の先頭は地元京都ゆかりの維新勤王隊列と、維新のヒーロー坂本龍馬、西郷隆盛、桂小五郎などの志士列。続いて江戸時代から平安時代までさかのぼる。現在の行列は20列、約2000人で全長約2km。先頭から最後尾が通り過ぎるまで約1時間半という、華麗なる大パレードである。