春という言葉からか、「小春」を早春のように思っている人がいる。小春は、陰暦(旧暦)10月の異称で、「こはる」または「しょうしゅん」と読む。現在の陽暦では11月から12月初旬に当たる。したがって、「小春日和」は、晩秋から初冬にかけての、春のようにポカポカと暖かい、風のない穏やかな晴天のことを指す。
歳時記の「小春」の項には、たいてい「小春日」と「小春日和」が一緒に出ている。晩秋から初冬のころには珍しい暖かな陽射し、それが「小春日」だ。そして、そうした天候、空模様が「小春日和」であって、その小春日和が何日かある頃が、つまり「小春」ということになる。
「小春空」といえば、小春の頃のうららかな空、海辺であれば「小春凪(なぎ)」となり、それは小春の頃の海の凪を指す。
季節は冬に向かっており、「小春日和」は、いってみれば「暖の戻り」。すぐに木枯らしになるので、体調にはご用心。
外国で「小春日和」に当たるものでは、北米の「インディアン・サマー」がよく知られている。インディアンが冬支度をする暖かい日、あるいは親切なインディアンの心のように暖かい日、など諸説あるが、いずれにせよ春ではなくサマー(夏)という。ほかにも、ドイツは「老婦人の夏」、ロシアでは「女の夏」という。また、イギリスの「セント・マーチンの夏」、フランスの「サン・マルタンの夏」のような言い方もある。
このことを地球規模で考えれば、北緯45度(日本では稚内〈わっかない〉あたり)以北の各国での、季節外れの暖かい日、それは春ではなく「夏」のイメージでの表現になるのだろう。つまり、かの地では、「春」は決して暖かい気候ではないのである。