師走は陰暦12月の異称の一つ。この「月の別称」の代表的なものを年初から順にあげれば、1月は睦月(むつき)、2月は如月(きさらぎ)、3月は弥生(やよい)、4月は卯月(うづき)、5月は皐月(さつき)、6月は水無月(みなづき)、7月は文月(ふみづき)、8月は葉月(はづき)、9月は長月(ながつき)、10月は神無月(かんなづき)、11月は霜月(しもつき)ときて、12月は師走(しわす)となる。12月の異称は、これだけではなく、ほかに、極月(ごくげつ)、臘月(ろうげつ)、春待月(はるまちづき)などもある。もちろん、他の月にもこのような異称のバリエーションがある。
さて、師走。この言葉の語源には諸説あり、多くの人がご存じのものから、なるほどというものまで、大きく分けて5~6説が伝えられている。
まずよく知られているのが、普段は落ち着いている先生=師も、さすがに12月は忙しそうに走り回っている、というもの。つまり「師が走る」ので「師走」というわけだ。
この「師が走る」に意味的に近くて、資料的にも裏づけがありそうなのが、師=お坊さんだとする説。元来、年末はお坊さんが各檀家(だんか)にお経を上げて回る時季。お盆と並ぶお坊さんの超繁忙期で、東へ西へと馳(は)せ参じなければならない。つまり、師馳す=師走だというのである。これは平安末期の辞典「色葉字類抄(いろはじるいしょう)」に説明があるといい、師走の語源としては一番もっともらしい。
ほかに、12月は歳の果てる時期なので、年果(としは)つ→しはつ→しはす、という説。四季の果てる時期→四極(しはつ)→しはす、という説などがある。
また、年の最後に為(な)し終える→為果(しは)つ→師走、という説もあり、これに似たものでは、最後=お仕舞いの意味での仕極(しはつ)→しはす、という説もある。
ただ、いずれも不確か。こじつけのようなものもあり、語源不詳というのが正解なのだろう。