単に意味だけでいえば「歳暮」は、年の暮れをいう言葉であるが、それに「お」をつけて「お歳暮」といったり、「歳暮の礼」、「歳暮の祝い」などといえば、それは年の暮れの贈り物になる。お盆前の中元とともに、季節の贈答の代表的な習俗習慣になっている。
この歳暮の品としては、お正月用の食品を贈るのが本来のならわしで、江戸時代から餅や鮭などが多く用いられてきたようだ。
贈答の形としては、子から親へ、弟子から師匠へ、部下から上司へ贈るというのが第一義。商家であれば、得意先へ贈るというのもこの意味のものになる。そして、古い時代であれば、主人から奉公人に物品が与えられるというのも第二義的な「歳暮」ということであった。
師へ父へ歳暮まゐらす山の薯 松本たかし
もともと、この贈答儀礼は、年越しの「魂祭(たままつり)」に寄せて、先祖の霊を祀(まつ)るための供え物を親元に届けたことに始まる。中元の場合も、元来は7月15日の「中元」に子から親に贈り物をする「生御霊(いきみたま)」の延長とされている。
そして歳暮の場合は、1年の締めくくりに際して、親だけでなく、いろいろな形でお世話になった人々に贈り物をして感謝のしるしとする習慣として広まっていった。それが「歳暮の礼」であり、「歳暮の祝い」と呼ばれる習慣である。それを略した言い方で「歳暮」「お歳暮」と言い習わすようになったわけだ。
歳暮の贈り物を届ける時期としては、大みそかまでというのが大原則だが、一般的には正月用品以外のものなら12月初旬から20日頃までに先方の手元に、とされている。昔は歳暮は持参するものであったが、配送システムが発達した現在、贈るほうも受け取るほうも、それにこだわる人はいない。