観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)は、一般に「観音様」と呼ばれて広く大衆的に信仰されている。それは、衆生(しゅじょう)、つまり、この世に生きるものすべての救済を本願とするとされるこの菩薩にとって、望むところなのだろう。
観音様は、本来は「如来(にょらい)」の資格がありながら、生きとし生けるものを救うために「菩薩」にとどまっておられるという、実にありがたい存在。ちなみに「如来」とは、修行を完成し、悟りを開いた者、つまり仏の意。たとえばお釈迦(しゃか)様が「釈迦如来」であり、宇宙の中心といわれるのが「大日如来」。お薬師様が「薬師如来」、阿弥陀様が「阿弥陀如来」である。そして、「菩薩」は「如来」となるために悟りを求めて修行する者の意。「観世音菩薩」や「地蔵菩薩」「日光菩薩」「月光菩薩」などと呼ばれる。
「観世音」菩薩様は、この「世」の人々の声(音)を見極め(観)、自在に救うために手を差し伸べるとされる。そのためか、お姿は、たとえば、多くの顔を持つ十一面観音や、多くの手を持つ千手観音になる。
大衆から「観音様」と親しみをこめて呼ばれるこの菩薩様は、広大無辺な慈悲の心をお持ちで、その名を唱えるだけで救われるという。この分かりやすさが人気の秘密かもしれないが、古くより「観音講」という、信者同士の親睦共済団体が大いに発展した。京都・清水寺の清水講が最も知られており、この講の信者たちが毎月18日に集まって酒食を共にしたという。観音様の縁日が18日になったのは、このことが由来といわれている。
毎月の縁日が18日。したがってその年の最初の縁日、1月の18日が「初観音」ということになる。京都の清水寺のほか、鎌倉の長谷観音、東京の浅草寺の「初観音」のにぎわいが名高い。中でも、浅草寺の初観音、1月18日には「亡者送り」という独特の悪魔封じの行事が行われ、多くの信者を集める。
近年は、1月1日の初詣に観音様に参るのを「初観音」ということもあり、この日にお参りすると百日分の功徳があるとされる。