天神様の縁日は毎月25日。1年の最初の縁日である1月25日を「初天神(はつてんじん)」という。縁日の25日は、天神様の祭神、菅原道真(すがわらのみちざね)公の誕生日が6月の25日、命日が2月の25日というところから、そうなった。
菅原道真は、「書の三聖」の一人として知られる平安時代中期の貴族で、大学者にして大政治家。しかし、政敵藤原時平の謀略により九州の大宰府(だざいふ)に左遷(させん)される。この左遷の勅(ちょく)が出たのも1月の25日というから、道真はよほど25日に縁が深い。
さて、この道真公、無実の罪による左遷を無念に思い、京の都への帰還を願いながら、2年後に大宰府に没するのだが、その魂は京都に飛び、怨敵藤原時平に祟(たた)って急死させる。さらに御所にも落雷があり、町には疫病がはやる。人々はこれを道真の怨霊の祟りと考え、北野天神社の地に祀(まつ)った。これが天候や雷雨をつかさどる「天神様」と道真が結びつくゆえんとなったのである。
この北野天神社が現在の北野天満宮(京都)であり、この社と没地の大宰府天満宮(福岡)、大宰府に向かう途中に滞在した防府天満宮(山口)の三社を三大天満宮という。
道真が大宰府で神事を行おうとしたとき、蜂が邪魔をしたことがある。その蜂を退治したのが「うそ鳥」。漢字では「鷽」と書く。この故事にちなみ、1月25日の「初天神」の折に、東京の湯島天神(湯島天満宮)などでは、「鷽替え」の神事が行われる。我々のついついついてしまう大小のうそを、天神様にお願いして「正しいこと」に変えていただきましょう、という神事。江戸時代よりの神事といわれているが、現在では木を削って作った「開運鷽」が授与される。
初天神が終われば、そろそろ梅の季節。「東風(こち)吹かば匂(にほ)ひおこせよ梅の花 主(あるじ)なしとて春な忘れそ」(春の東風が吹いて花が咲けば、梅の花よ、そのよい匂いを私のところに届けておくれ。私がここにいなくても春が来たことを忘れないでおくれ)。この歌は、道真が大宰府へ向かうため京都の自邸を離れるときに詠(よ)んだ歌。道真が大宰府で没したとき、道真が愛したその京都の梅が一夜のうちに大宰府に飛び、生えて匂ったという。「飛び梅」の故事である。