「かまくら」は、秋田県横手地方の小正月(旧暦1月14~16日ころ)の行事で、子どもたちが雪で室を作り、水神を祀(まつ)る。現在では2月の15、16日の横手の「雪まつり」として催事化されている。
数百年の歴史を持つといわれる雪国の伝統行事だが、昭和8(1933)年に来日したドイツ人の世界的建築家ブルーノ・タウトは、その著書「日本美の再発見」で「かまくら」の風情を絶賛した。「すばらしい美しさだ。これほど美しいものを私はかつて見たこともなければ、また予期もしていなかった。・・・ここにも美しい日本がある、・・・」として、その幻想的なメルヘンの世界を国際的に知らしめたのである。
現在の典型的なかまくらは、直径3m半ほどの円を描き、その上に3mほどの高さに雪を積み、踏み固めてから、正面入り口と定めた部分から掘っていく。そうして、雪壁の厚さを50cmほど残して内部を大きく堀りあげ、壁をなめらかにする。最後に内側正面に神棚を作って出来上がりとする。
藩政(江戸時代)のころ、横手の武家町では旧暦1月14日の夜にかまど状のものを雪で作り、その中で門松や注連(しめ)飾りなどを焼く行事をしたという。この「かまど状」のものが「かまくら」の語源ともいわれている。また、この「かまど状」のものに「鎌倉大明神」を祀(まつ)ったことが語源ともいう。
一方、横手の商人町では旧暦1月15日の夜、井戸のそばに雪室を作り、そこに水神様を祀ったという。この雪室を「神座=かみくら」としたことが「かまくら」の語源とする説もある。
こうして「かまくら」は横手の人々の小正月の行事となった。「かまくら」の中から子どもたちが「はいってたんせ(はいってください)」「おがんでたんせ(神様を拝んでください)」「あまえこのんでたんせ(甘酒をのんでください)」といいながら、甘酒や餅をふるまってくれる。
40年ほど前からは、多くのミニかまくらにろうそくを灯す夜景も加わって、いっそう幻想的な雰囲気が醸(かも)されるようになったが、基本的には観光というよりも伝統行事。子どもたちとの交流を通じて、雪国の冬の夜の「ぬくもり」を感じたい。