三寒四温、と口にすると、七転び八起きと同じように、何か明るい展望につながるような気がする。数字を交えて語呂よくつくられた言葉の持つ、不思議な力である。
三寒四温は春先の季語だが、その時季における寒暖の日の繰り返しを指す言葉だということは、たいていの日本人は知っている。そこから、この言葉のユニークな理解も生まれて、「気温の3度は寒く感じるが4度になれば暖かく感じるものだ」とか「3月までは寒いけれど、4月になれば暖かくなることをいうのだ」といった笑い話のような珍解釈、迷解説も一人歩きしている。
「三寒四温」とは、もともと中国北部や朝鮮半島の冬季にみられる気象現象をいう言葉。どういうことかといえば、3日ほど寒い日が続き、その後、4日ほど暖かい日が続く。そういう寒暖交互の天気が7日周期で繰り返されながら、次第に暖かくなっていくことをいった。
この寒暖の気候は、冬季のユーラシア大陸で発達したシベリア高気圧の勢力に影響されたもの。この勢力が強くなれば、寒気が強く押し出されて三寒の日々となり、勢力が弱まれば四温となる。中国北部や朝鮮半島は、このシベリア高気圧の「7日周期」の影響を、よりいっそう強く受けるので、三寒四温が顕著に現れるというわけだ。
日本では、移動性高気圧の影響で、この「三寒四温・7日周期」の寒暖が中国北部、朝鮮半島ほどははっきりしていなくて、三寒四温から二寒二暖の「4日周期」に変わりながら、春に近づいていく。それが、2月の下旬から3月上旬のことである。