雪を割って咲く花、厳寒の季節の終わりと春の到来を告げるというその名のイメージとともに、早春を代表する花として多くの人々に愛されてきた「雪割草」。
ただ、この花には栽培と鑑賞を楽しむ園芸種として広く愛好されている一連の「雪割草バリエーション」と、植物学的にこれが「雪割草」だと限定されているものとの、2パターンあることはあまり知られていない。
まず、「花好き」の人々のなかでも一派を形成している「山野草愛好家」、この人たちを中心として趣味の園芸品種として育てられている雪割草がある。こちらは、多くはキンポウゲ(金鳳花)科のミスミソウ(三角草)がそう呼ばれているもの。この花は本州、四国、九州、朝鮮半島の湿地帯に分布する多年草。直径1.5cmほどの、白、青、薄紫色などの小さな花を咲かせる。
ほかに、近縁のスハマソウ(州浜草)も、「雪割草」と呼ばれることもあるが、ミスミソウの茎葉がとがっているのに対し、こちらは丸い。いずれも雪の残っているころに、まるで雪を割るようにして咲く可憐(かれん)な花。最近は、交配による高額な新品種も出ているようだ。
この「雪割草」は北アメリカやヨーロッパにも仲間が分布していて、「国際雪割草協会」という団体が活動している。日本で「国際雪割草協会事務局」が置かれているのが、新潟県長岡市の国営越後丘陵公園。10年ほど前から新潟地方が日本における「雪割草」の本場をアピールしているようだが、越後の雪割草は、「オオミスミソウ(大三角草)」。先述の国営越後丘陵公園、雪国植物園、大崎雪割草の里などの自生地が、例年3月になるとオープンする。この長岡市から柏崎市にかけての「越後雪割草街道」と通称される地域が、雪国越後によく似合う花の自生地として注目を集めている。
さて、もう一つの、植物学的に位置づけられる「雪割草」は、サクラソウ科の小型の多年草。日本では中部地方以北の高山の湿った岩場に群生し、雪解けとともに、淡紅色の愛らしい花を咲かせる。花言葉は、あなたを信じます、である。