4月8日は、お釈迦さまの誕生日。日本だけでなく、世界中の仏教徒が、この日を祝い、花で飾った「誕生仏」にお参りする。これが一般に「花祭」と呼ばれ、また「灌仏会(かんぶつえ)」「仏生会(ぶっしょうえ)」、あるいは「釈尊降誕会」などとも呼ばれる行事である。
世界三大宗教の一つ、仏教の開祖である釈迦牟尼(しゃかむに)は、今から約2500年前、紀元前6世紀半ば(諸説あり)にヒマラヤの南麓、天竺(インド)のカピラ城の王子として生まれた。父は浄飯王(シュッドーダナ)という釈迦族の王。母は摩耶夫人(マーヤー)。
本名は「ゴータマ・シッダールタ」。おなじみの「釈迦」の呼び名は、一族の名からとられたもの。悟りを開いてからは「仏陀」と呼ばれた。また、「釈迦牟尼世尊」は釈迦族の聖者という意味で、「釈尊」はその尊称である。
このお釈迦さまの誕生日が、なぜ「花祭」と呼ばれるのか。それは、誕生のときのエピソードによる。出産間際というとき、母の摩耶夫人がルンビニーという花園で無憂樹(むうじゅ)の花を取ろうと右手を上に差し伸べたとき、その右脇から男の子が生まれた。ちなみに、インドでは「右」は「清浄」を意味する。
これでお分かりのように、お釈迦さまは花園の中で花に囲まれて誕生した。花祭は、お釈迦さまの誕生を祝う行事として、その誕生の様子を再現しているのである。まず、花で飾られた小さなお堂「花御堂(はなみどう)」に誕生仏を安置する。そして、参詣者は誕生仏に甘茶をかけて祝意を表す。これは、竜王が釈迦の誕生を喜び、甘露をそそいで産湯としたという伝説による。この甘露を「灌(そそ)ぐ」ことから「灌仏会」という呼称も生まれた。
お釈迦さまは誕生時に7歩歩いたあと、右手で天を指し、左手で地を指して「天上天下唯我独尊」と宣言したという。花御堂に安置された小さなお釈迦さまの像は、そのときの姿を表したものである。