穀雨(こくう)は二十四節気の一つで、4月20日ごろのこと。そして5月6日ごろの立夏までの15日間ほどのこともいう。初春、仲春、晩春の三春でいえば、すでに晩春、いわば季節の変わり目である。
暦は基本的に農事、農作業の必要に応じて発達してきたものだが、「穀雨」は穀物の成長を助ける雨とされている。田畑に出て大いに働くのにはよい気候となった。秋にまいた種は順調に育ち、春の種まきには絶好の時期。それを知らせるのが「穀雨」という春雨である。
暦便覧に「春雨降りて百穀を生化すれば也」とある。この春雨は百穀を潤して生長させるのだ、というわけだが、「百穀」といわれて、我々はいったいどれくらいの穀物を思い浮かべることができるだろうか。
まず、身近なところで「五穀豊穣を祈る」の五穀を挙げてみよう。これについては、日本では古くから「米、麦、粟(アワ)、黍(キビ)、豆」をいう。あるいはこの中の黍を稗(ヒエ)とする説もある。いわば、人間の常食とする五つの穀物というわけである。そして、そのことをもって、「五穀」を穀類の総称として使う場合もある。
穀物、穀類は、最も古い栽培植物であり、大きくイネ科の植物とマメ科の植物に分けられる。これに蕎麦(ソバ)を加えて「穀物」という場合もある。
しかし普通は、イネ科といっても、稲や麦、つまり、麦の仲間の燕麦(エンバク)や大麦、小麦、ライ麦あたりまでの名前を挙げられるのがせいぜいだろう。雑穀も、粟、黍、稗、唐黍(モロコシ)、玉蜀黍(トウモロコシ)、鳩麦(ハトムギ)あたりまでか。これに食料用の豆類を加えても、とても百穀までは届かない。百穀もまた、すべての穀物という意味の文学的表現なのだろう。
作物の歴史としては、東洋では雑穀より麦が新しく、逆に西洋では麦より雑穀のほうが新しいという。