日本三大○○という言い方があって、その中に「日本三大祭り」というまとめ方がある。それは東京の神田祭、京都の祇園祭、大阪の天神祭ということになっている。この祭カテゴリーには、さらに「日本三大美祭」というまとめ方があって、それは秩父の夜祭、京都の祇園祭、そして高山祭なのだそうだ。
このどちらにも入っている祇園祭は、さすがに日本一を豪語するだけのことはある貫禄だが、さて、考えてみれば「三大」というまとめ方は便利なようでいて、その基準や前提がよく分からないことが多い。
しかし、「三大美祭」の場合は、すぐお分かりのように、三つの祭りに共通するものがある。それは何台もの屋台、山車(だし)を引くということ。秩父、高山をご存じない方も、京都祇園祭の「鉾(ほこ)」とか「山」とか呼ばれている、あの形態の山車は頭に浮かぶだろう。あれの少し小ぶりなものが、桜のころの高山の町を巡行する。「春の高山祭」である。
高山のある岐阜県は、古い国名でいえば北部の飛騨、南部の美濃の二つの国からできている。その飛騨地方の中心地が高山。したがって一般には「飛騨高山」と呼ばれることも多く、またその落ち着いた町の風情から「飛騨の小京都」としても人気の観光地である。
この飛騨の人々は、山に囲まれた環境からか、古くから木材を扱う技能に優れ、奈良や京都の社寺の建築、装飾を担って声価を高めてきた。全国ブランドの「飛騨の匠(たくみ)」である。
日光東照宮の「眠り猫」で知られる伝説的名人、左甚五郎も「飛騨の甚五郎」ではないか、という説もある。
そうした飛騨の匠の技は、高山祭の山車にも存分に生かされ、その豪華絢爛(けんらん)な山車は「動く東照宮陽明門」とも称される。桜の花の中、12台の山車が宮川にかかる赤い欄干(らんかん)の中橋を行く様は、さながら一大絵巻である。また、特定の山車には「からくり」人形も付設されており、見物客の喝采(かっさい)を浴びている。
春の高山祭は、日枝神社山王祭のことで毎年4月14、15日。ちなみに秋の高山祭は桜山八幡宮の八幡祭で毎年10月9、10日。この両祭の総称が高山祭である。