旧暦の「五月」「皐月」=「さつき」は、現在の陽暦では5月の末から7月の初旬あたりのこと。したがって、五月雨(さみだれ)、つまり陰暦5月の長雨は、梅雨のことになる。
では、なぜ五月雨で「さみだれ」と読むのか。「さ」は「さつき」の「さ」。そして、「みだれ」は「水垂れ」である。梅雨の呼称は江戸時代からのことで、それまではこの「さみだれ」が一般的だった。
ちなみに「五月晴れ(さつきばれ)」も、現在では新緑の5月のさわやかに晴れわたった空、ということになっているが、本来は梅雨の晴れ間という意味だったのである。
梅雨前線は、南からやってくる。最初に入梅するのはもちろん沖縄で、平均して5月18日だとのこと。東北地方北部の入梅が、これも平均で6月12日というから、ほぼ1カ月のずれ。日本列島は南北に長いということを実感する。
この日本独特の気候は、古来、詩ごころにも大いに影響を与えてきたようだ。
「古今集」では、紀友則の歌に
「五月雨に物思ひをれば郭公(ほととぎす)夜深くなきていづちゆくらむ」。
俳句では、松尾芭蕉の代表句に
「五月雨の降り残してや光堂」
「五月雨を集めて早し最上川」
ダラダラと雨が降り続く状況を「五月雨式○○」とか「五月雨ストライキ」といったりする。また、長雨、梅雨の夜の暗さは「五月闇(さつきやみ)」。こういうニュアンス豊かな日本語はぜひ残しておきたい。