6月の上旬、北陸の古都、金沢は「百万石まつり」で大いに盛りあがる。
もちろん、この「百万石」は「加賀百万石」にちなむもの。そして「まつり」は、この北陸の大藩の祖となった前田利家とその妻お松の方にちなむ祭りである。
前田利家と松夫妻は、戦国時代の勝ち組として、「豊臣秀吉とおね」「山内一豊と千代」と並び称されるカップル。NHKの大河ドラマ「利家とまつ」も上々の人気ドラマであった。
この利家と松を祀(まつ)るのが尾山(おやま)神社。色ガラスの神門でも知られる金沢の観光スポットだが、この神社の神社誌に、加賀藩祖前田利家公が天正11年(1583)の6月14日に金沢に入城したことが記されている。尾山神社は、この利家公の偉業を称える祭礼を行い、戦前まではこの祭礼に併せて金沢市民祭が行われていた。これが百万石まつりのルーツとされている。
現在の百万石まつりは、昭和27年(1952)が第1回。そこから、豪華絢爛(けんらん)な百万石行列や百万石踊り流し、百万石茶会、百万石薪(たきぎ)能など多彩なイベントを誇る壮大な祭りに発展し、2008年で第57回となった。
金沢は北陸最大の都市だが、その城下町に加賀藩前田家が独特の文化を育んできた。藩政時代から続く伝統文化は数多いが、空から謡が降ってくるといわれるほど盛んな「加賀宝生(ほうしょう)」の能、裏千家ゆかりの茶道とそれに伴う和菓子など、いまなお金沢の文化の根幹をなしている。
百万石まつりでは、08年の場合、6月6日の金曜日に尾山神社で祈願祭と献茶式。7日の土曜日は、朝8時半より兼六園周辺で百万石茶会。午後3時から、金沢駅前から金沢城公園まで百万石行列が行われる。この行列は加賀鳶(とび)、加賀獅子舞、武者行列などの大パレード。そして、夜の7時より百万石踊り流し。8日の日曜日は、朝8時半より百万石茶会。夜6時半より金沢城公園で百万石薪能が行われる。
併せて協賛行事として、浅野川で加賀友禅燈籠(とうろう)流しも行われ、この3日間、金沢は伝統文化に彩られる。