7月の9日と10日、東京・浅草の浅草寺(せんそうじ)は「四万六千日(しまんろくせんにち)」の人出でにぎわう。浅草寺のご本尊は、ご存じの通り「観音さま」だが、観音信仰のお寺では、「初観音」が1月の18日であるように毎月18日が縁日。そして、この縁日のほかに、特定の日にお参りすると、百日分とか千日分参詣したのに相当するご利益、功徳が得られるという「功徳日」があり、「百日参り」とか「千日参り」などという。
その「功徳日」のなかで最も相当分の日数が多いのが「四万六千日」。なんと、ほぼ130年分の功徳になる。浅草寺では7月10日がその「四万六千日」の「功徳日」。この慣わしは、江戸時代中期からとのことだが、「四万六千日」のあるその日は、ふだんに増しての人出になるのは当然なのである。
それに加えて、というのか、この人出を当て込んでというのか、同じ7月9日、10日の日程で、「浅草寺のほおずき市」が催される。
境内に店を張って鉢植えのほおずきを売る「ほおずき屋」は、200軒ほど。加えて、風鈴(ふうりん)や灯籠(とうろう)の店も並ぶ。つまり、浅草寺の「四万六千日」と「ほおずき市」は、大きな縁日と盆迎えの草市が合体したものなのだろう。
盂蘭盆(うらぼん)に帰ってくるご先祖の精霊は、迎え火や提灯(ちょうちん)の火を目印にするのだが、ほおずきはその迎え火や提灯の火に見立てられて、お盆に飾られたのである。
いま関東で「ほおずき市」といえば浅草寺の市が代名詞だが、もともとは愛宕山(あたごやま)の愛宕神社(東京都港区)が始まりとか。愛宕神社では6月の23日、24日に「千日詣(まい)り」というお祭りがあり、この日には古くから「ほおづき市」が立つ。江戸時代は、愛宕神社のほおずきが薬として珍重されたという。
ほおずきには利尿やせき止め、解熱の効能があるので、体調を崩しやすい季節の用心の象徴とされたのかもしれない。