東北四大祭りといわれる「青森ねぶた」、「秋田竿燈(かんとう)まつり」、山形の「花笠まつり(8月5~7日)」「仙台七夕まつり(8月6~8日)」のなかで、祭りの壮観だけでなく、人間の力に感動するものとしては「秋田竿燈まつり」がナンバーワンだろう。
となりの青森県の「ねぶた」や「ねぷた」は巨大な提灯(ちょうちん)ではあるが、台車に載せて引いていく。ところが、秋田の「竿燈」は、同じく提灯を祭りの主体として練っていく形ながら、大若(おおわか)と呼ばれる大人のジャンルにおいては12m長の太い竹竿(さお)に46個もの提灯をつけ、その重量は50kgになるという「竿燈」を、人間の力で何時間も支えるのである。
それも単に支えるだけではない。風に揺れるこの提灯のお化けのようなものを、差し手若衆と呼ばれる男たちは、片手の手のひらや、肩、額、腰などに乗せ、倒れないようにバランスをとりながら練るのである。
しかも、この「竿燈まつり」が地元に根付いた伝統の祭りだとわかるのは、竿燈を差すのが、大若、つまり大人の男性だけではないというところ。中若(ちゅうわか)と呼ばれる中学生たちは、長さ9mに重さ30kg、小若(こわか)と呼ばれる小学4年生から6年生の少年たちは長さ7mに重さ15kg、そして幼若(ようわか)と呼ばれる5歳から小学3年生までの男の子たちは長さ5mに重さ5 kgの竿燈を差す。そして、来年はもっと大きな竿燈を、もっと上手に差したい、そのために力と技を身につけたいと願うのである。
国の重要無形民俗文化財に指定されたこの祭事は、18世紀半ばの江戸時代の宝暦年間に始まったとされる。収穫の秋を前にした豊作祈願と、災厄よけとして古くから行われてきた「眠り流し」などが一体化したものとのこと。差し手若衆の姿が、現在のような白足袋にわらじ、そろいの半纏(はんてん)に帯、といったような形に整ってきたのは大正期からという。
8月の3日から6日の4日間、秋田の夜は「夜空から降りた天の川」と称えられる。二百数本の竿燈に掲げられた、総数1万個を超える提灯が揺れている。