万燈会(まんどうえ)、もしくは万灯会は、仏や菩薩(ぼさつ)に一万という数の灯明を供養し、滅罪生善、諸願成就を祈念する法会(ほうえ)であり、万燈供養ともいわれる。多くは、盂蘭盆会(うらぼんえ)との関連で、8月に行われることが多い。
各地の社寺で行われるが、古くからの行事だけに、京都や奈良といった古都の社寺の「万燈会」「万燈供養」がよく知られている。
たとえば京都では、8月の8日から10日まで、東山区五条通の六波羅蜜(ろくはらみつ)寺で「六波羅蜜寺萬燈会」が行われる。六波羅蜜寺は、「空也念仏」で口唱念仏を広めた空也上人(くうやしょうにん)の開基。そして萬燈会は、この名僧が応和3年(963)に、村上天皇の勅許(ちょっきょ)を得、各地から音に聞こえた高僧を招いて行った法要が始まりという。つまり、1040年以上も続く、まさに古都ならではの行事である。
まず8日早朝に、法会の始まりである「開白(かいびゃく)法要」。続いて8日から10日の午後8時には「大萬燈点灯法要」が行われる。これは、本堂内陣に108個の灯明を「大」の字に点して精霊迎えとするもの。そして盂蘭盆会最終日の16日の夜、精霊は大文字送り火によって送られる。
京都では、ほかに14日から16日の午後6時~9時に点灯される東本願寺の東大谷「万灯会」
や、20日の午後5時からの大覚寺「万灯会法要(宵弘法)」もよく知られている。
南都といわれる古都奈良では、8月の15日に「東大寺大仏殿万灯供養会」が行われる。これは、「お盆に帰省できない人びとにも、せめてご先祖の供養をしていただけるように」との趣旨で昭和60年(1985)に始められた、大仏殿と参道、回廊を含む幻想的な光のファンタジー。15日の午後7時から10時、東大寺のご本尊大仏様への二千余という献灯が、大仏殿の空間に並ぶ。そして、献灯者それぞれの願いが書かれた灯籠(とうろう)のほのかな明かりのなかに、大仏様のお顔が浮かびあがる。そのお顔を特別に設けられた「観相窓」から拝観できるのは、正月とこのときだけである。