暦の上では、9月7日ごろが二十四節気のうちの「白露(はくろ)」にあたる。そして、次の二十四節気である「秋分(しゅうぶん)」(9月23日ごろ)までの約15日間のことも「白露」という。
二十四節気の15日間をおおむね5日ごとに分ける「七十二候」で「白露」期間を見ると、日本におけるその初候は「草露白(そうろしろし)」(草に置いた露が白く光る)、次候は「鶺鴒鳴(せきれいなく)」(せきれいが鳴きはじめる)、末候は「玄鳥去(げんちょうさる)」(ツバメが南の国に帰っていく)、ということになる。
白露を「しらつゆ」と読めば、草や木の葉の上に白く光って見える露のこと。このように、朝などに気温が下がって葉の上に露を置くようになる季節の到来である、というわけだ。ちなみに、和歌などで「白露の」といえば、それは「露を置く」「露が玉なす」の意から、「おく」「たま」にかかる枕言葉になる。
もちろん、秋のモチーフとして日本の詩歌のなかで「白露(はくろ、しらつゆ)」は大事にされてきた。古今和歌集に「秋の野に置く白露は玉なれやつらぬきかくるくもの糸すぢ」(文屋朝康)、新古今和歌集に「秋風は吹きむすべども白露のみだれて置かぬ草の葉ぞなき」(大貳三位)、現代俳句にも「快晴の白露の一日授かりぬ」(稲畑汀子)、「ひとの声今日はききたき白露かな」(わたなべじゅんこ)などがある。
秋の気配が漂い始めるとすぐに連想されるのが、酒仙歌人・若山牧水の名歌「白玉の歯にしみとほる秋の夜の酒はしづかに飲むべかりけり」だが、酒どころ新潟に越後杜氏(とうじ)が手がけた銘酒「白露(しらつゆ)」がある。それも、蔵元の高野酒造が明治32年(1899)の9月8日、白露の日に誕生させたというからさすがである。
お隣の山形には出羽蔵人入魂の酒という「白露垂珠(はくろすいしゅ)」がある。蔵元の名前が「竹の露合資会社」というのもいかにもだし、原材米が「美山錦」というのも秋の酒にふさわしくていい。
清酒だけでなく、焼酎にも「白露」はある。芋焼酎の本場鹿児島は指宿(いぶすき)市の、その名も「白露酒造」の芋焼酎「白露」。指宿はサツマイモが初めて日本本土に伝来した土地で、蔵元は享保年間(1716~36年)の創業と、まさに薩摩仕込みの正統派芋焼酎。こちらは「しらつゆ」と読む。