10月中旬の北海道は、秋たけなわというより、すでに晩秋の趣。紅葉も、ちょうど見ごろ。そうしたなかで、毎年10月8日から10日の3日間、阿寒湖の「まりも祭り」が行われる。
まりも。漢字で書けば「毬藻」、つまり毬(まり)状の「藻」というわけで、緑藻類シオグサ科の球形淡水藻。大きいものは直径30cmにもなる、暗緑色の藻である。なかでも、阿寒湖の「まりも」は国の特別天然記念物に指定されている。近似の種類に山梨県山中湖の「ふじまりも」、青森県下北半島左京沼の「ひめまりも」などがあるが、いずれも小型。
このように、もともと「まりも」といえば「阿寒湖」という密接なイメージがあり、年配の方々には「毬藻の唄」などでもおなじみだが、この歌が流行したのは昭和28年(1953)ころのこと。「まりも祭り」は、その少し前の昭和25年(1950)に始まった行事である。そのころに、それまで勝手に持っていかれていたまりもを湖に返そうという運動が起き、それを契機に、まりもの保護を願って「まりも祭り」が始められたとのこと。以来、すでに半世紀以上の歴史を刻み、阿寒湖畔の秋の最大の行事となっている。
祭りは、アイヌの人々によって執り行われる。丸木舟に乗ったアイヌの人々が、夜の湖畔で待つ長老にまりもを手渡す儀式など、古式ゆかしく厳粛な雰囲気のなかでの進行。その後、アイヌの人々の集落であるアイヌコタンでまりもを護る行事や輪舞が行われる。そして、最終日には、また丸木舟に乗って、まりもを阿寒湖に返す儀式。
こうして、自然と人間の共生を願いながら「まりも祭り」は終了するのだが、それは、「環境保護」が人類共通の課題となった現代に、多くのことをアピールする「祭り」に思われる。