11月1日は、新「米穀年度」の初日である。翌年の10月31日までがその年度となる。
普通の1月1日からの1年、あるいは日本の官公庁などの制度である4月1日から翌年の3月31日までの「会計年度」、同じく4月から翌年3月までの「学年度」などに比べて、「米穀年度」というのは、あまり聞きなれない言葉かもしれない。それも無理からぬところで、これは農林水産省の用語であり、いわば米穀業界の「業界用語」なのである。
いうまでもなく、お米は日本人にとって欠くことのできない主食。したがって、流通や質も含めてその安定的供給は国としての課題であるということから、長く農水省が管轄する農産物となっている。
一般的にいって、収穫されたばかりの、つきたての「新米」は、「古米」よりも価値が高い。それでは、「新米」とはなにか、「新米」と「古米」の違いはなにか。そこに、線引きが必要になってくる。それが、この11月1日からの「米穀年度」である。
どこかで線引きをするというのは、いかにも「お役所」的だが、しかし、どこかで線を引かざるを得ないのだろう。ただ、この日以降に流通するものだけを「新米」とすることが実態に合っているのか、といえば首を傾げざるを得ないのも事実。
周知のごとく、米は、早稲(わせ)から晩稲(おくて)まで、品種により収穫時期がさまざま。早稲などは7月に刈り入れるものもある。それを11月1日以前に流通させたからといって「新米」ではないとするのか。それは「古米」なのか。そのあたりが、なんともあいまいなのである。
秋には「新米」をうたった米関連商品が多く出回る。JAS法によれば、収穫の年の末までに精白されて包装された精米に限り「新米」という文言を使用してもよいという「玄米及び精米品質表示基準」があるとのこと。
しかしこれも、それでは晩稲のように11月に収穫し、翌1月に精白、包装したものは「新米」と表示できない、ということになる。さて。
お米をはじめ、食品をめぐるトラブルが相次ぐ昨今だが、いずれにせよ、主食の「新米」のおいしさは、毎年しみじみ味わいたい。
「新米にまだ草の実の匂ひ哉(かな)」 蕪村