師走の京都、それも押し詰まった12月20日過ぎに、大きな「市」が続けて立つ。21日の「終(しま)い弘法」と25日の「終い天神」である。それぞれに、毎月21日と25日に立つ市で、京都の人々の間で「今日は弘法さんやなあ」「明日は天神さんやから」などといわれて、長く親しまれてきた。
まず21日の「弘法さん」は、京都の九条にある大寺院、東寺の縁日に開かれる「弘法市」のこと。その1年最後の市なので「終い弘法」ということになる。
ご存じのように、東寺は都の鎮護のために平安遷都直後に創建され、弘仁14年(823)、宗教史だけでなく日本史上稀代の天才といわれる空海に勅賜された名刹(めいさつ)。正式名称は教王護国寺といい、国宝の五重塔で知られた東寺真言宗の総本山。このお寺の俗称が「弘法さん」なのである。
真言宗の開祖弘法大師空海は、承和2年(835)3月21日に亡くなったのだが、のちに21日に大師をしのんで市が立つようになり、その市も「弘法さん」と呼ばれるようになった。
いずれにせよ、800年近い歴史を誇る、日本を代表する市。歴史の長さだけでなく、大寺院だけに境内も広大で、その中に1000軒以上の露店が並ぶ。骨董ものは有名だが、ほかに陶器、古着、大工道具、人形、下駄草履(ぞうり)、人形、おもちゃ、植木、縁日独特の食べ物屋など、ごちゃ混ぜ。12月の「終い弘法」は、それに正月用品が加わって、なんと1日数十万人の人出。日本各地から、また外国からの観光客も含め、年末ならではのあわただしさと活気がないまぜられた市となる。
そして、毎月25日の北野天満宮の縁日に開かれているのが「天神さん」。こちらは、天満宮の祭神菅原道真を親しみを込めて「天神さん」といったものが、そのまま神社および市の呼び名ともなった。その12月25日の市が、「終い弘法」と同じく「終い天神」といわれ、大いににぎわう。
市の内容はほぼ東寺と同じだが、「弘法市」が全国区の知名度に加え、規模も日本最大級の市となるのに比べ、「天神さん」はやや小規模。それだけに地域に密着した売り買いのやり取りが楽しい。
ただ、この開催日の近い二つの「終いの市」に対して、お天気の神様は公平ではないらしく、おおむね片方が晴れならもう一方の日は雨になるらしい。
ともあれ、この二つの市のにぎわいは、そのまま年明け1月の「初弘法」「初天神」へとつながっていく。