1月10日は「十日えびす」。えびす様を祭神とする全国各地の神社で行われるその年最初の縁日「初えびす」のことを、日付にちなんで「十日えびす」という。
えびす様の「えびす」は、夷、戎、恵比須、恵比寿、蛭子などと表記され、一般には「えびっさん」「えべっさん」などと親しみを込めて呼ばれてきた。
身近なところでは、「えびす・だいこく」と何かのコンビのように呼ばれて、大黒さまと一緒に台所に祀(まつ)られたりする。大鯛を釣り上げて大笑いのえびす様。大きな袋を肩にかけ、右手に「打出の小槌(こづち)」を持ち、米俵に乗っかった大黒様。二神合わせて、山海の幸や富をもたらしてくれる福の神として信仰されているわけだ。
もちろん、えびす様は、お正月にはおなじみの「七福神」の一神。そして七福神のなかで、唯一日本古来の神様だとされている。ちなみに、大黒様をはじめ他の神様は中国やインドの神々。しかし、えびす様も、「夷」という漢字表記が示すように、本来ははるか海の彼方からやってきた、いわば「異邦人」なのである。
えびす様は、鯛を釣り上げているその姿からもわかるように、まず「漁業の神様」として尊崇された。漁業が盛んなところには「市」が立つ。そこで、えびす様は「市の神」ともいわれるようになる。そして、市で物と人が行き交うなかで、商いが大きくなっていくにしたがい、「商業の神さま」となっていった。
えびす様を祭神とする神社は日本各地にあるが、数からいえば圧倒的に西日本が多い。現在、たとえば東京では10社ほどといわれるが、京都で約70社、広島県では350社近くもあるとのこと。また、全国約3500社のえびす様の神社の総本社は兵庫県の西宮神社であり、最も盛大な「十日えびす」は大阪の今宮戎神社といわれている。江戸時代から天下の台所といわれ、商業の中心地であった大阪の今宮戎神社の「十日戎(えびす)」がにぎわうというのも、もっともな話である。
今宮戎神社では正月9日の「宵戎」、10日の「本戎」、11日の「残り戎」の3日間で100万人の人出。参道や境内では、たくましい生命力を持つ笹に小判などの「吉兆(きっきょう)」を飾って商売繁盛を願う「福笹」が売られる。
その間、あの「商売繁盛、笹持って来い!」という有名な掛け声が飛び交うのである。