1月28日は「初不動」。一般に「お不動さん」として親しまれている「不動明王(ふどうみょうおう)」の、その年最初の縁日である。不動明王は不動尊(ふどうそん)ともいわれ、不動の字からわかるように、もともとの梵語(ぼんご)では「動かざる尊者(そんじゃ)」という意味である。
不動明王は、五大明王・八大明王の一つ。明王とは、大日如来の真意を受けてさまざまな悪魔を退治する役目をもつ諸尊で、忿怒(ふんぬ)の相、つまりものすごい怒りの表情が印象深い。明王としては不動明王の他に愛染(あいぜん)明王、降三世(ごうざんぜ)明王などが知られている。
不動明王は、悪魔と対決するために、目をカッと見開き、右手に剣、左手に羂索(けんさく)を持ち、火炎の中に立つ。この火炎は、大日如来の忿怒から生じたもので、明王がすべての煩悩と罪から離れ、動揺のない、即ち「不動」境地に入っていることを示している。
インドはもちろんチベットや中国など広く信仰されているが、とりわけ日本では観音信仰、地蔵信仰と並ぶ篤(あつ)い庶民信仰があり、成田山新勝寺などがその代表例である。
成田山新勝寺のご本尊は、平安時代に嵯峨天皇の勅願を受けて弘法大師が開眼した「不動明王」。成田屋の屋号を持つ歌舞伎の市川宗家は、正月の舞台で観客をぐっとにらむ「にらみ」がお家芸だが、これは、市川団十郎に乗り移った不動明王がその悪鬼退散の霊力を観客に与えるというもの。にらまれると1年間風邪をひかないといわれ、団十郎が「それでは一つ、にらんでみせましょう」というと、客席はどっと沸くのである。
また、「五色不動」といって、目の色か身体を黒白赤青黄の五色に分けて五つの不動を祀(まつ)ることがある。そうして江戸を護ったことの一つが「目黒不動」であり、「目白不動」「目赤不動」なども残っている。高野山明王院(和歌山県高野町)の赤不動、三井寺(みいでら)(滋賀県大津市)の黄不動、青蓮院(しょうれんいん)(京都市)の青不動は「三不動」といわれている。
不動明王が右手に持つ剣にちなんでいえば、「たぬきだにのお不動さん」で知られる京都の狸谷山不動院に、剣聖宮本武蔵が心を磨いたという「武蔵修行之滝」がある。初不動の日の「がん封じの笹酒接待」が有名。東京では、日野の高幡不動が新撰組副長土方歳三の菩提寺。ここの初不動祭にはだるま市も立つ。