2月15日は、仏教の開祖お釈迦様(釈尊〔しゃくそん〕、釈迦牟尼〔しゃかむに〕)の亡くなった日(入滅〔にゅうめつ〕の日)とされ、この日には、お釈迦様をしのんで「涅槃会(ねはんえ)」という行事が行われる。涅槃会は他に「仏忌(ぶつき)」「涅槃忌(ねはんき)」「常楽会(じょうらくえ)」などとも呼ばれ、お釈迦様の誕生日である4月8日の「灌仏会(かんぶつえ、花祭り)」、悟りを開いた日である12月8日の「成道会(じょうどうえ)」とともに、「釈尊の三大法会」として仏教各派の行事の中で最も重要なものとなっている。
釈迦牟尼の「牟尼」は梵語(ぼんご、サンスクリット語)で聖者の意味だが、釈迦はもともとヒマラヤ南麓のカピラ城の王子として生まれた。そして、29歳で宮殿から出て出家生活に入り、厳しい苦行を経て、35歳のときにブッダガヤの菩提樹の下で悟りを開いた。その後、長い伝道の旅を続けた釈迦は、80歳で自らの死期をさとる。
最後の説法の旅の途上、クシナガラの郊外でその歩みを止めた釈迦は、白い花をつけた2本の沙羅樹(沙羅双樹〔さらそうじゅ〕)の間に布を敷かせ、頭を北にし、右脇を下にして西向きに横たわった。そして、周りに集まった弟子や民衆に、悲しまなくてもよいこと、精進の大切なことを語りかけ、静かに「涅槃」に入ったという。
涅槃とは、煩悩から脱却した絶対的な静寂。仏教の理想の境地。また、聖者の入滅、入寂、つまり死ということも意味している。
「涅槃会」の法会では、この釈迦の入滅、涅槃に入ったときの様子を絵にした「涅槃図」を掲げる。これは、どの宗派でも同じである。「涅槃図」には、沙羅双樹の下に横たわる釈迦が描かれ、その周りに阿難陀をはじめとする十大弟子や諸菩薩、天竜、鳥や獅子、鬼までが嘆き悲しむ様子が描かれている。そうした悲嘆があることで、かえって釈迦の安らかな姿が心に響くのだろう。
「涅槃会」では、この「涅槃図」を掲げるとともに、釈迦の最後の説法である「遺教経(ゆいきょうぎょう)」などが読誦(どくじゅ)される。
釈迦の生涯については、その生没年を紀元前566~486年とするものや紀元前463~383年とするものなど、諸説ある。