2月の第3土曜日、岡山市の西大寺で、日本三大奇祭の一つといわれる「会陽(えよう)」が行われる。「会陽」は、一般的には「西大寺の裸祭り」で知られる行事である。ちなみに、日本三大奇祭のあとの二つは、岩手県の黒石寺で2月に行われる「蘇民祭(そみんさい)」と大阪市の四天王寺で1月に行われる「どやどや」。三つとも、厳寒の夜に、男たちがふんどし一丁でもみあう祭りである。西大寺の「会陽」と黒石寺の「蘇民祭」は白ふんどし、四天王寺の「どやどや」は赤ふんどし組と白ふんどし組に分かれる。
会陽が行われる金陵山西大寺は、天平期開基の岡山市東部の名刹(めいさつ)。この「会陽」も、およそ500年の歴史を持つ伝統行事である。
西大寺では、もともと国の繁栄安寧を祈願する正月行事「修正会」の結願の日に、参詣者に護符を出したという。この護符が、「寿、富、康寧、好徳、終年」の五福について、岡山弁でいうところの「ぼっけえ(ものすごい)」ご利益があると評判になり、人々が護符を求めて殺到した。そして、戦国時代前期の永正7年(1510)、忠阿上人が住持のころ、護符が奪い合いで破られないように、木に変わったという。
人々に投与される木は直径4cm、長さ20cmで、神の木とされ「真木(しんぎ)」と呼ばれた。それが現在、「しんぎ」という呼び方はそのままで、「宝木」と書かれる、ありがたい木である。
2月の第3土曜日の夜、午後6時過ぎに、まず「少年はだか祭り」が始まる。境内では、奉賛の女性たちによる「会陽太鼓」が鳴り響く。午後9時から吉井川の緑地公園で「会陽冬花火」の開始。そして、午後11時ごろから白ふんどし姿の男たちが集まり始める。学生グループ、会社名が入った鉢巻を締めた“企業はだか”など、全国から参集した男たちは「垢離取場(こりとりば)」に入り、冷水で身を清める。その男たちを含め、当日の参拝者の数は、3万とも3万5000ともいわれる。
真夜中の12時、本堂の御福窓から住持が2本の「宝木」を投下すると、9000という数の裸の男たちが、肉弾相打つ「宝木」争奪戦を繰り広げるのである。
真っ暗闇の中、この木を手にすることが出来た男は「福男」と呼ばれ、その年の「五福」が約束される。参加要件は、基本的に、「ふんどし姿になれる男」とのこと。