陰暦3月13日は「十三参り」の日、とりわけ関西では「七五三」よりも盛んといわれる「通過儀礼」の風習である。
子どもたちは、その成長過程において、いくつかの節目があり、そこを通過するときにお祝いが催される。この「十三参り」は、少年少女が13歳になったとき、大人への仲間入りのための風習で、虚空蔵菩薩(こくうぞうぼさつ)に参詣する。13という年齢と虚空蔵菩薩の縁日の13日が結びついた行事である。
この「13歳」は、数え年の13歳。十二支の生まれ年が2順目に入る年のことで、いわゆる「元服」を迎えて大人となる歳を意味する。そして、大人となるための体力と知力を身につけることを願い、広大無辺の知力と福徳を授けてくれる虚空蔵菩薩に詣でるのである。天才とうたわれた空海・弘法大師も虚空蔵「求聞持法(ぐもんじほう)」によって超人的な頭脳を得たとのことで、「十三参り」は「知恵参り」とか「知恵もらい」などともいわれる。
この「十三参り」で有名なのが、虚空蔵菩薩を本尊とする京都・嵯峨嵐山の法輪寺。知恵、福徳、技芸上達の願いをかなえてくれる「嵯峨の虚空蔵(こくぞう)さん」として古くから知られ、今昔物語、枕草子、平家物語などにもその記述が見える。そうしたことから、京都の風習として江戸時代中期の安永年間(1772~81年)のころに「十三参り」が始まったとされている。
嵐山の名勝渡月橋を見下ろす法輪寺への「十三参り」。参詣のあと、帰りに渡月橋を渡るときには決して振り返ってはいけない、という言い伝えがある。
「渡月橋では、何があっても、絶対に振り返ったらあかんのえ」。こう親に脅されるのだが、振り返ったらせっかく授かった知恵を返さなければならない、という以上に、初めての厄年である女子にとっては「厄除け」のプレッシャーがかけられていたようだ。
この日、男子は羽織袴(はかま)、女子は大人仕様の本裁ちの着物を着用、とされた。また、女子はこの日、初めて化粧をしてもらうこともあるという。
もともとは、陰暦3月13日の行事であったが、現在は4月の13日に行われることが多い。そして、京都を中心とした関西の風習であったのが、最近は東京の浅草寺をはじめ、全国各地にも広まっているようだ。