代表的な歌舞伎舞踊「京鹿子娘道成寺(きょうがのこむすめどうじょうじ)」や、その基になっている「安珍清姫(あんちんきよひめ)」伝説ゆかりの寺、和歌山県日高川町の道成寺で、4月27日に「鐘供養会式」が行われる。
この会式の呼び物は「ジャンジャカ踊り」と呼ばれる25m張り子の大蛇の大暴れ。この大蛇が赤い火を吐きながら日高川を渡り、町内を練りまわり、最後に道成寺の62段の石段を一気に上って鐘に取り付くという、大迫力の催し。
「道成寺」ものといわれるさまざまな芸能、あるいは「安珍清姫」を主人公とする各種物語をご存じの方にはおなじみの光景である。
紀州和歌山最古の寺とされる天音山道成寺は、大宝元年(701)の創建。ご本尊の千手観音は日本で最も古い観音像の一つといわれる。
寺域は和歌山県中部を流れ、御坊市南部で紀伊水道に注ぐ日高川の畔にあり、このことから、「安珍清姫」伝説をベースとする歌舞伎や浄瑠璃の三味線曲は、総じて「日高川」といわれる。周辺自治体も2005年に合併して「日高川町」となった。
道成寺には、寺名物の「道成寺縁起」絵解き説法がある。絵解き説法とは、仏画や地獄絵などを示しながら仏の功徳を説くもの。「道成寺縁起」では、熊野へ修行に行く若僧安珍と旅の途中で出会った清姫の悲恋物語が語られ、最後に法華経のありがたさが説かれる。
清姫は安珍に一目ぼれしたが、安珍は修行を理由に「あとでまた来る」と約して別れる。しかし、実は逃げたわけで、このことに怒った清姫は大蛇となって追いかける。そして日高川を渡って道成寺に逃げ込み鐘の中に隠れた安珍を、鐘に巻きついて恨みの炎で焼き尽くす。最後に、道成寺の高僧の祈祷(きとう)でやっと二人は成仏する、という話である。
この「縁起」をもとに「道成寺」ものの原点といわれる能の「鐘巻」「道成寺」ができ、歌舞伎の「京鹿子娘道成寺」や「二人道成寺」などにつながった。白拍子花子を主人公とした歌舞伎のこの二つの演目は、女形舞踊の魅力が最も発揮される。04年歌舞伎座正月公演、坂東玉三郎と尾上菊之助という当代最高の立女形と若女形が競演した「二人道成寺」は、近年の名舞台と評価されている。