京の奥座敷といわれる京都市左京区の「貴船(きぶね)」。夏場には貴船川の渓流に涼を求める人も多い人気の観光スポットである。この地にある「貴船神社(きふねじんじゃ)」の奥宮は古社中の古社といわれ、その創建年代は不詳。
言い伝えによれば、神武天皇の母である玉依姫が、黄色い船に乗って大阪湾から淀川、鴨川をさかのぼり、賀茂川の水源に着いたところを「水の神」を祀(まつ)る地としたとのこと。神社の名は、この黄色い船「きふね」に由来するといい、地区名の「きぶね」とは呼び分ける。
貴船神社は、正式には「貴布禰総本宮 貴船神社」といい、全国に約500社ある貴船神社の総本社。水をつかさどる神として、あるいは「縁結びの神」として篤(あつ)い信仰を集めている。
この貴船神社の年間行事のなかで、最も大きな祭りが「貴船祭(きぶねまつり)」。もともとは旧暦の4月1日と11月1日に行われていた「御更衣祭(ごこういさい)」が起源で、明治以降は新暦にあわせて両祭を合わせて6月1日に行うようになった。現在、企業や学校などの制服の衣替えも、多くはこの6月1日に行われている。
「貴船祭」は、貴船神社本宮にて6月1日の11時より古式にのっとった祭典が神職らによって執り行われ、続いて舞楽が奉納される。そして、13時に本宮から神輿(みこし)が出発。貴船・鞍馬地区の氏子と島根県の加茂町、安来市の貴船神社の氏子に担がれた神輿は、貴船地区内を巡幸して奥宮に向かう。
15時からは奥宮にて「子供千度詣(こどもせんどまいり)」。船形石の周りを地元の子どもたちが「おせんどんどん」という掛け声とともにぐるぐると回る。子どもたちの健やかな成長を祈願する行事だが、これは一般参加も可能とのこと。
ひきつづき「招福もちまき」と、加茂町の貴船神社出雲神楽奉納団による「ヤマタノオロチ退治神話」の出雲神楽奉納がある。
ちなみに貴船神社は「絵馬発祥の社」といわれるが、これはこの社の龍神に願った「雨乞い」が起源。歴代天皇から、日照りに対する「雨乞い」には黒馬、長雨に対する「雨止め」には白馬か赤馬が献じられた。その生き馬が、ときには「板立馬(いたたてうま)」になり、これが現在の「絵馬」の原形といわれている。