「芒種(ぼうしゅ)」は二十四節気の一つで、太陽暦の6月5日ごろにあたる。1年を24の季節にわけ、一節気を15日とする二十四節気の巡りでいえば、小満(5月21日ごろから15日間)の次、夏至(6月21日ごろから15日間)の前の15日間のことである。
ただ、二十四節気の中では、この夏至や大暑、立秋、秋分など、よく使われる語句に比べると、あまりなじみのない節気といえるだろう。それは、おそらく先に挙げた節気に比べ、語句の意味や印象がはっきりしないためである。
「芒種」の意味をひもとくと、暦便覧では「芒(のぎ)ある穀物、稼種する時なり」とある。「芒」は「すすき」を表す字で見かけるが、ここでは「ぼう」と読み、それは「のぎ」の意味となる。では「のぎ」とは何か。それは「イネ科の植物の花の外側にある針のようなもの」。稲や麦の実りの姿を思い浮かべればすぐにわかる、あの、穂の先につんつん飛び出した部分のことである。
ここから「芒(のぎ)ある穀物」とは稲や麦のこととなる。そして「稼種する」とは種をまくこと。したがって「芒種」は、稲などの種をまくとき、苗を植える時期という意味になる。現在の田植えの時期とはややずれるかもしれないが、旧暦の時代には農事暦としてのリアリティーがあったのだろう。
二十四節気をさらに3分割し、初候、次候、末候に分けた七十二候では「芒種」は次のようになる。
初候は「蟷螂生(とうろうしょうず)」。蟷螂、つまりカマキリが生まれるころ。次候は「腐草為蛍(ふそうほたるとなる)」。腐った草の下から蛍が現れるころ。末候は「梅子黄(うめのみきなり)」。梅の実が熟して黄色になるころ。
水田に稲の苗が順調に育ち、蛍が飛び始めるころ、日本列島は西のほうから入梅となっていく。