6月14日、大阪の住吉大社で「御田植え」の神事が行われる。
大阪の人々に「すみよっさん」と呼ばれて親しまれている住吉大社。全国2300余の住吉神社の総本社で、大阪のみならず、関西を代表する古社である。
祭神は海の神様、航海の守護神「住吉大神」。これは、住吉三神と神功(じんぐう)皇后を祀(まつ)った総称とされている。神社は、古代より大陸との交流の窓口、いわば「国際港」として開けた住吉津(住之江津)にある。そこは神功皇后のいわゆる「三韓征伐」ゆかりの地であり、その後の遣隋使、遣唐使などもここで航海安全を祈願して出航した。現在の住吉神社の「反橋(そりばし)」(太鼓橋)あたりまで海であったという。
さて、この住吉大社の「御田植え」神事だが、有数の古社らしく、日本の稲作の始めのころよりの行事を、当時と同じ格式で伝えるものといわれ、全国各地の「田植え行事」の代表的なものとされている。このことから、この神事は、国の重要無形民俗文化財にも指定されている。
伝統がきちんとした形で受け継がれてきた背景には、境内にある「御田」の存在も大きいだろう。神功皇后がつくらせたという、いわゆる「神饌田(しんせんでん)」。神様にささげる米を作る田んぼだが、約20a(約600坪)の広さを持ち、田植えから稲刈りまでする「御田」は全国でも少ないとのこと。
人間の命を育む食料、その主力である穀物には「神霊」が宿るといわれ、稲の苗を田に植えることは、田の神に豊かな実りを祈る神事の意味を持っていた。そして、古来、この田植えに際して、盛大に音楽をかなで、歌い踊るのは、穀物の神様、田の神様を喜ばせ、その霊力を増強させ、秋の豊穣を促す重要な儀式だったのである。
その穀物の神霊を「さ」ということから、田植えをする時期を「さつき」(皐月。旧暦5月)と呼び、「さなえ」(早苗)を田に植える女性を「さおとめ」(早乙女)と呼んだ。この「さおとめ」の田植え行事の形態を、住吉神社の「御田植え」神事はよく伝えている。「さおとめ」つまり植女(うえめ)などはお祓(はら)いを受けた後、行列で御田に向かい、早苗の授受を行う。
御田の四方にご神水を注いで清め、赤たすきに菅笠の「早乙女」たちの田植えが始まる。
その間、中央舞台や周囲では、舞や踊りがにぎやかに繰り広げられるのである。