毎年8月の1日から4日まで、岩手県盛岡市は東北五大夏祭りの一つとされる「盛岡さんさ踊り」で大いににぎわう。
この「さんさ踊り」は、もともと南部(盛岡)藩の時代から、城下町盛岡とその周辺を中心に踊られていた盆踊りの行事。各地域にそれぞれの「さんさ踊り」が今も伝えられている。現在の「盛岡さんさ踊り」は、そういったいくつかの、いわば「さんさ」系統の踊りをまとめる形で1978年から盛岡市の夏の一大催事となった。
さんさ踊りの起源についてはいくつかの説があるが、盛岡の三ツ石神社の鬼退治伝説が最もよく知られている。三ツ石様の神通力で鬼を降参させたときの祝いの踊りということだが、このとき降参の証として鬼が岩に押した手形が「岩手」の地名のもとといわれている。いずれにせよ、地域伝統の「鹿(しし)踊り」や念仏踊り、田植え踊りなど古くから郷土に根づいた芸能が集合したものなのだろう。
ただ、激しい足さばきと、笛、太鼓、鉦(かね)の囃子方(はやしかた)も一緒に集団に入って激しく踊るという形態は、この踊りの大きな特徴といえる。とりわけ、胴にくくりつけた太鼓をたたきながら踊る囃子方の姿は、人間原初の踊りの喜びを印象づけてくれる。
そういうところから「盛岡さんさ踊り」は、「日本一激しいリズムの盆踊り」といわれることになったのだろう。有名な盆踊りである阿波踊りのリズムとも、江州音頭や河内音頭のリズムとも違う、みちのく独特の響きとテンポがそこにはある。
8月1日の18時、「ドンドン、ドン」という独特の太鼓の音が響き渡る。踊り手、囃子方、総勢3万数千人という参加者による「盛岡さんさ踊り」が盛岡市の中央通りで始まる。笛方2000人、そして太鼓方は、なんと1万2000人。和太鼓の同時演奏(2571個)としてギネス記録をつくった「世界一の太鼓大パレード」である。パレードの後は、誰もが自由に参加できる「輪踊り」。大迫力の踊りの輪が広がっていく。
2007年のNHK朝の連続ドラマ「どんど晴れ」でも紹介され、全国的に知られるようになった。