子どもたちのウワサから生まれた「顔が人間、胴体は犬」という化け物犬。89年の夏に登場し、90年には大人の間にも広がった。バリエーションはさまざまで、ゴミをあさっている犬に声をかけたら、人面犬で「オレの勝手だろう」と捨てぜりふをはく、高速道路を140km/h以上のスピードで疾駆する、ムササビのようにビルからビルへ飛ぶ、などである。人面犬と並ぶウワサに学校霊花子がある。夕方の人気のない小学校の男子トイレで、奥から2番目の扉を15回ノックして、「花子さんいますか」ときくと、誰もいないトイレの中から少女の泣き声が聞こえる、というものである。いずれも具体的な数字が付記されて奇妙なリアリティーがある。また人面魚の佃煮(佃島で人面魚の姿煮が売られている)など、子どもたちのネットワークから生み出されるウワサは数え切れない。