大正末に活躍し夭折した童謡詩人、金子みすゞ(本名・テル、1903~30年)が脚光を浴びている。96年春に出版される五つの小学校教科書に初めて取り上げられるほか、テレビドラマやCMにも登場するなど、「優しく清らかな作品」が、すさんだ世相に一服の清涼剤となっている。かつて西条八十が「若き童謡詩人の巨星」と絶賛した作品の大半は未発掘だったが、この10年、作品集が30万部も売れ、静かなブーム。26歳で服毒自殺した幸薄さに加え、「いじめ」や「オウム事件」など荒廃した世の中が、かえってみすゞの優しく清らかな作品を求めたのかもしれない。