2015年8月11~13日に、中国の中央銀行である中国人民銀行(人民銀)が行った事実上の人民元切り下げと、それによって世界経済が受けた影響のこと。中国の通貨である人民元の取引は、05年7月に実質的な固定相場制から、政府が一定の範囲内で為替相場を管理する管理変動相場制に移行。毎朝、人民銀が人民元取引の基準となる為替レートの基準値(中間値)を公表し、その上下2%以内の範囲でしか売買できないように制限している。従来、基準値は国内の銀行の報告をもとに算出されていたが、15年8月11日、人民銀は算出方法を市場の前日終値などを参考にしたものに変更すると発表。この変更に伴い、基準値は対ドルで前日から1.8%余り切り下げられ、1ドル=6.2298元とされた。さらに、12日に約1.6%、13日に約1.1%と3日連続で切り下げを実施し、基準値の切り下げ幅は計約4.5%となった。連日の大幅な切り下げについて、同銀は市場の実勢と基準値のかい離を是正する措置と主張。一方で市場関係者などからは、景気減速が続く中での自国通貨安への誘導による輸出促進策とも見られており、中国経済の先行きに対する不安が拡大。中国の上海総合株価指数が大きく下落したほか、各国の株式市場で中国への輸出関連銘柄を中心に価格の急落が相次ぐなどの影響が出た。さらに8月24日には東京株式市場で日経平均株価が900円近く値を下げ1万9000円を割り込み、ニューヨーク株式市場ではダウ平均株価が一時1000ドル以上急落するなど、中国発の世界同時株安の状況となっている。また、ベトナムが通貨ドンの実質的な切り下げにつながる措置を発表するなど、新興国を中心に輸出競争力を押し上げるための通貨安競争に発展する懸念も指摘されている。