欧州連合(EU)加盟国の一つ、キプロスで発生した金融、財政危機。地中海東部の島国である同国は、2004年5月にEUに加盟し、08年1月には単一通貨ユーロを導入。国内総生産(GDP)は約180億ユーロとユーロ圏全体の約0.2%にとどまるが、低い税率や緩い規制により外国資金を呼び込み、国内の銀行が運用する資産はGDPの7倍以上に膨らんだ。キプロスの銀行はこうした資金の多くをギリシャ国債などで運用していたため、09年からのギリシャ危機で巨額の損失を出し、経営危機に陥った。同国政府から救済の要請を受けた他のユーロ圏諸国は、13年3月、100億ユーロの支援に同意したが、その条件としてキプロスの銀行預金者にも58億ユーロの負担を求めた。そのため、キプロス政府は銀行預金への臨時課税を実施しようとしたが、国民の反発により断念。結局、同国1、2位の銀行を再編して破たん処理したうえで、両銀行における10万ユーロ超の大口預金者に強制的に損失負担(同行株式への転換など)を求める形で決着した。この間、同国内では預金の引き出しが制限されるなどの混乱が発生。また、スペインやイタリアなど、他のユーロ導入国の信用不安が再燃する可能性も危惧(きぐ)されている。