太平洋沿岸12カ国の貿易自由化などをめざす環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉において、2015年9月30日から同年10月5日にかけてアメリカのアトランタで開かれた閣僚会合でなされた大筋の合意。参加国は日本、アメリカ、カナダ、メキシコ、ペルー、チリ、ニュージーランド、オーストラリア、シンガポール、マレーシア、ベトナム、ブルネイ。TPPは2006年にシンガポールなど4カ国で発効した自由貿易協定を原型とし、10年3月にアメリカなど4カ国が参加しての拡大交渉が始まった。13年7月に12カ国目として日本も交渉に参加したが、各国の利害対立で調整が難航。大筋合意までに5年以上の年月を要した。これまで内容は明らかにされてこなかったが、大筋合意を受けて日本政府は15年10月5日、原産地規則、衛生植物検疫、投資、金融、電子商取引、知的財産、労働、環境、中小企業、紛争解決など全30章におよぶTPPの概要を公表。また20日には関税交渉の全容を発表した。これらによれば、日本は輸入する農林水産品と工業生産品の全9018品目のうち、約95%の8575品目で関税を撤廃する。農産品では81%の1885品目で、発効から最長21年目までに関税を順次撤廃。関税撤廃の例外を要求していた重要5項目(米、麦、牛・豚肉、乳製品、砂糖)でも、約30%にあたる174品目で関税をなくす。日本が輸入する工業製品については、すでに大半で関税を撤廃済みだったが、最終的には6642品目全てで撤廃される。このほか、著作権の保護期間は従来の作者の死後50年から70年に延長。著作権違反は告訴なしでも当局が起訴できる非親告罪となった。また、アメリカとオーストラリアなどが対立していたバイオ医薬品の開発データ保護期間は実質8年とされた。11月5日には協定文書の全文(英語版)も公開され、付属文書も含めると1500ページを超える協定の全容が明らかになった。参加国は16年1月にも協定に署名する見通しだが、実際に協定が発効されるためには署名後に各国が議会での承認を得るなどの要件を満たす必要がある。参加各国ではTPPに懐疑的な意見もあるため、承認手続きが難航することも予想されている。