労働者が、所属する企業と競合する企業へ就職したり、退職後に競合する企業を設立したりして同業者として事業を行う“競業行為”をしない義務。取締役は会社法第365条の「競業の制限」などにより、取締役会の承認を得ていない競業行為を禁じられており、一般の労働者は労働契約法第3条第4項における信義誠実の原則に基づいて競業避止義務を負うとされている。企業の情報漏えい対策としても活用される。ただし、企業が従業員に秘密保持義務を課す場合は、就業規則に明記し、個別に秘密情報の具体的な内容を示した秘密保持契約を結ぶ必要がある。また、退職者には職業選択の自由があることから、競合行為の制限も限定的になるため、裁判に持ち込まれた場合でも、競業避止義務契約が有効と判断されなかった例もある。そこで、2013年3月、経済産業省は退職者による技術情報流出への対応策として、競業避止義務契約を活用した情報保護の活用実態や有効性を分析し、「人材を通じた技術流出に関する調査研究報告書」を公表。報告書の中では、裁判の場で競業避止義務契約の有効性が認められやすくなるポイントとして、(1)退職後の競業避止義務期間が1年以内であること、(2)禁止行為の範囲について業務や職種による限定を行っていること、(3)競業避止義務に対して、高額の賃金などの代償措置が設定されていること、などを挙げている。