アジア・太平洋地域のインフラ整備の支援を目的とした、中国が主導する国際金融機関。2013年10月、中国の習近平国家主席が、アジア太平洋経済協力会議(APEC)において創設を提唱した。14年10月24日、中国のほか、シンガポール、タイ、フィリピン、インドなど、アジアを中心とした21カ国が設立覚書に調印。その後、15年3月にイギリスが参加したのを皮切りに、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ルクセンブルクなどの欧米諸国、トルコ、エジプト、サウジアラビア、南アフリカなどの中東、アフリカの国々も相次いで参加を表明。最終的な創設メンバーは57カ国に拡大した。日本は、組織のガバナンスや運営の透明性に疑問があるとして、アメリカ、カナダなどとともに参加を見送った。同年6月29日、北京の人民大会堂で設立協定の調印式が開かれ、創設メンバーとして参加表明していた57カ国のうち、中国との領有権問題を抱えるフィリピンなど7カ国を除く50カ国が設立協定に署名した。本部は北京に設置し、加盟国から選ばれた12人で構成される理事会が運営を行うが、アジア開発銀行(ADB)などとは異なって理事は本部に常駐しない。資本金は1000億ドル(約12兆3000億円)で、出資額は75%をアジア域内、25%をアジア域外に割り振り、各国の国内総生産(GDP)に応じて算出。中国が約297億ドルと最大の出資を行う。設立協定に、重要案件の可決には75%以上の賛成を要するとの条項が盛り込まれており、出資比率などから算出される議決権で26.06%を有する中国は、事実上の拒否権を持つことになる。署名を見送った国との調整を図りながら、15年内の設立、業務開始を予定している。