ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が、一部のディーゼル車で排ガス規制を不正に逃れていた問題。2015年9月18日、アメリカ環境保護局(EPA)が問題を明らかにし、同国内で販売された対象車48万2000台のリコールを命じたと発表した。発覚のきっかけとなったのは、アメリカのウェストバージニア大学の研究チームによる実験。13年春から、ディーゼル車の排ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)の量を実際に路上を走行しながら測定したところ、VWの乗用車「ジェッタ」からはEPAが定める規制基準の15~35倍、「パサート」からは5~20倍のNOxが排出された。そのため、14年5月に測定結果をEPAなどに報告。その後の調査で、該当車種のディーゼルエンジンには違法なソフトウエアが組み込まれていることが判明した。ソフトウエアは、ハンドルなどの動きから試験装置での走行と判別した場合には排ガス浄化装置をフルに作動させて基準をクリアするが、実際の走行では浄化機能を低下、または停止させて燃費性能の向上などを図っていた。EPAによると、実際の走行時には基準の最大40倍のNOxを排出するものもあるという。EPAの追及により、VWは15年9月に正式に不正ソフトウエアの存在を認めた。同月22日、同社は問題のエンジンを搭載した車両が全世界で約1100万台に上る可能性があると発表。同社の主力車種「ゴルフ」などVW本体の製品のほか、グループのアウディや、チェコのシュコダ、スペインのセアトなどの一部車種にも搭載されている。この問題を巡っては、同社のマルティン・ウィンターコルンCEOが同月23日に引責辞任を表明。ドイツ国内の報道では、不正が05~06年ごろから組織ぐるみで進められてきた可能性が指摘されている。アメリカ国内で最大約2兆円の制裁金が科せられる可能性があるほか、各国における罰金、該当車の改修コスト、所有者からの訴訟、ブランドイメージの低下など、不正の代償が大きく膨らむことが予想されており、創業以来最大の危機に瀕している。