ユーロ圏の金融政策をつかさどる欧州中央銀行(ECB)が2015年1月22日に実施を発表した金融緩和策。市場に出回る資金を増加させることで物価を上昇させ、デフレを防ぐことを目的とする。ユーロ圏では、14年12月の消費者物価上昇率が前年同月比で0.2%の下落と約5年ぶりのマイナス転落となっており、デフレの懸念が広がっていた。ECBの発表によると、15年3月から同行の指揮のもと、ユーロ圏各国の中央銀行が域内の国債や欧州連合(EU)関連の国際機関が発行するユーロ建て債券などの資産を対象に、買い取りを行うことで市場に資金を供給する。買い入れの規模は、すでに実施していた資産担保証券(ABS)なども含めると、毎月600億ユーロ(約8兆円)。当面、実施する予定の16年9月末までの買い入れ総額は約1兆1400億ユーロ(約156兆円)に達する見込み。その規模の大きさから、報道などではマリオ・ドラギECB総裁の名を取って「ドラギ・バズーカ」と呼ばれることもある。実際の買い取りは、各国の中央銀行がECBへの出資比率に応じて自国の国債を買う仕組みで、EUなどから金融支援を受けているギリシャの国債も、財政再建などの公約を守ることなどの条件つきで買い取る。買い取った国債などによる損失が生じた場合、その80%は各国中央銀行の責任とされ、残り20%はユーロ圏全体で共有する。1999年のユーロ誕生以来、ECBがデフレ対策を理由に国債の買い入れを実施するのは初の試み。これまではドイツやオランダなど財政が健全な国の反対により、導入が見送られてきた。各国で経済、財政政策が異なるユーロ圏でデフレ対策として効果が上がるか、などを懸念する声もある。