日本銀行(日銀)が2016年9月20、21日に開催した政策委員会・金融政策決定会合で導入を決定した金融政策。日銀では、13年4月に「量的・質的金融緩和」を、16年1月に「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」を導入し、実質金利の低下や、物価の持続的な下落に歯止めをかけるという効果をもたらした。しかしながら、日銀が定めた2%の物価安定の目標は実現できていなかった。日銀では、その主な要因が原油価格の下落などによって予想物価上昇率が横ばいから弱含みに転じたことにあると分析。これを踏まえて、2%の物価安定の目標をできるだけ早期に実現するための新たな政策として、長短金利操作付き量的・質的金融緩和を導入することとした。具体策の第1としては、長期と短期の金利を操作する「イールドカーブ・コントロール」を導入。短期金利の操作には、日銀当座預金のうち、政策金利残高にマイナス0.1%の金利を適用する。長期金利の操作には、10年物国債金利がおおむねゼロ%程度で推移するよう、これまでどおり保有残高が年間約80兆円増加するペースで長期国債の買い入れを行うこととした。また、長短金利操作を円滑に行うため、(1)日銀が指定する利回りによる国債買い入れ、(2)固定金利の資金供給オペレーションを行うことができる期間を現行の1年から10年に延長、の二つを新たなオペレーション手段として導入した。さらに具体策の第2として、消費者物価上昇率の実績値が安定的に2%の物価安定の目標を超えるまで、マネタリーベース(日銀の金融市場への資金供給量。市中に供給した日銀券〈現金〉、金融機関が日銀に預ける当座預金残高の合計)の拡大方針を継続する「オーバーシュート型コミットメント」を採用した。資産の買い入れについては、(1)上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)は、保有残高がそれぞれ年間約6兆円、年間約900億円に相当するペースで増加するよう買い入れを行う、(2)コマーシャルペーパー(CP)などは約2.2兆円、社債などについては約3.2兆円の残高を維持するとした。