労働者派遣法は、派遣労働者の就業条件の整備や、労働現場での権利の確保のために定められた法律で、正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」。2015年9月11日に改正法が成立し、同月30日に施行された。法改正による最も大きな変化は、企業が派遣社員を受け入れる期間の制限が事実上なくなったこと。従来は秘書や通訳など専門性の高い「26業務」のみ受け入れ期間制限がなく、それ以外の一般業務は上限が3年とされており、3年たてば受け入れ企業はその仕事を派遣社員に任せることはできず直接雇用に切り替える必要があった。改正法では26業務の区分を廃止、1人の派遣労働者が同じ職場で働ける期間の上限をすべての業務で3年とし、派遣会社と派遣労働者が無期契約を結んでいる場合に限り、派遣期間は制限されないとした。これにより、受け入れ企業は、労働組合などの意見を聴くとの条件つきではあるが、3年ごとに人を替えれば同じ業務を派遣労働者に任せ続けることができる。一方、派遣労働者からすれば3年で職を失う可能性があるため、改正法では派遣期間が3年を経過した場合は、受け入れ先に直接雇用を依頼するといった措置を派遣会社に義務付けるなど、派遣労働者の雇用安定に向けた対策が盛り込まれている。とはいえ、受け入れ企業に直接雇用の義務はなく、実効性に疑問が残るなど、今回の改正は総じて企業側の都合を優先したとの批判がある。なお、改正法施行翌日の10月1日から労働契約申し込みみなし制度が始まった。これは、企業が派遣労働者を違法派遣に当たると知りつつ受け入れている場合、派遣労働者に対して直接雇用の申し込みをしたとみなす制度で、12年の同法改正に盛り込まれたもの。しかし、今回の改正労働者派遣法の施行により、従来なら派遣期間の制限違反に該当していたケースが合法になるなど、みなし制度が派遣労働者の待遇改善につながらなくなったと指摘されている。