中国経済は高度成長の段階を過ぎて、安定成長を目指す新しい段階に入っているという考え方を示す経済用語。2008年にアメリカの大手投資銀行リーマン・ブラザーズが破たんしたことで、信用不安が急速に広がり金融危機に陥ったリーマン・ショック後の世界経済の新たな常識を指す言葉として、アメリカの投資関係者などの間で広まったニューノーマル(new normal)という英語を中国語に訳したもの。ニューノーマルとは、リーマン・ショック後に収縮した経済は回復後も元の状態には戻らず、経済の構造的な変化が避けられないことを意味している。近年の中国は、実質GDP成長率が前年比で10%程度増加という急速な経済成長を続けてきたが、その一方で、工業の生産過剰や金融リスクなどの問題を抱えていた。習近平政権が誕生した12年には通年で7.8%に減速し、その後も成長率は7%台で推移しており、こうした変化を受けて、14年夏には、習国家主席や李克強首相ら指導部の発言や、共産党の機関紙である人民日報の報道で新常態という言葉が多用されるようになった。いずれのケースでも、成長率の減速は中国経済にとって自然な変化であり、今後は安定成長を維持しながら、経済の急激な膨張が生んだ問題を解消する構造改革が必要だとする文脈で用いられている。