法律や条例、行政処分などによって命じられた行為を履行しない義務者に代わって、行政機関が強制的にその行為を行うこと。1948年に制定された行政代執行法により定められる。同法では、他人が代わって行うことが可能で、他の行為では履行の確保が困難であり、放置すると著しく公益に反すると認められる場合に、行政機関や第三者による代執行ができるとしている。例えば、公共空間を不法に占拠する建造物の撤去や、不法投棄された廃棄物の処理などがこれにあたる。代執行を行う場合は履行期限を定め、事前に義務者に文書で戒告する必要がある。また、履行に要した費用は義務者から徴収できる。一般法としての行政代執行法のほか、建築基準法や土地収用法などの法律でも代執行に関する規定を設けている。地方自治法では、各大臣が所管する法律や政令に関して都道府県知事が受託する事務の管理、執行において、法令違反や執行の怠りがある場合、勧告、指示、裁判を経て代執行することができるとしている。2015年10月、米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の辺野古(同県名護市)移設計画を巡って、翁長雄志沖縄県知事は辺野古沿岸部の埋め立て承認を取り消したが、同年11月17日に政府は処分撤回の代執行を求める訴えを福岡高裁那覇支部に起こした。地方自治法に基づき、国が地方公共団体の法定受託事務の代執行を求める訴訟を起こした初めてのケースとなった。一方、地方自治法の趣旨に照らせば、国が地方公共団体の権限を制限することになる代執行については、より慎重に判断されるべきとの指摘もある。