1972年、外務省担当の毎日新聞政治部記者、西山太吉が同省の女性事務官から日米沖縄返還協定をめぐる極秘電信文を入手したことで、国家公務員法違反に問われた事件。別名、沖縄密約事件、外務省公電漏えい事件。西山記者が71年に入手した極秘電信文には、沖縄返還に際してアメリカが支払うべき軍用地復元補償費400万ドルを日本が肩代わりする密約が明記されており、西山記者はこれを日本社会党の衆議院議員、横路孝弘と楢崎弥之助に提供。翌年3月に横路らが国会で電文を示し、佐藤栄作内閣を追及したことから事件は発覚した。同年4月、警視庁は西山記者と女性事務官を国家公務員法違反で逮捕。各紙は、国民の「知る権利」の侵害、言論弾圧を訴えた。しかし、取材の過程で女性事務官と肉体関係を結んだ事実が明るみに出ると、世論は同記者批判に一変した。女性事務官は一審の判決を控訴せず、有罪が確定。西山記者の裁判は、国民の「知る権利」、「取材の自由」などを争点に最高裁判所に上告されたが、78年6月に棄却され、取材手段の違法性などから有罪が確定した。2000年5月にアメリカの公文書によって密約の存在が裏付けられた後も、日本政府は否定した。13年10月22日、機密を漏らした公務員に対する罰則強化を盛り込んだ特定秘密保護法案を担当する森雅子少子化相が、西山事件に類した取材活動は処罰対象になるとの考えを示したことに対し、言論弾圧などにつながるとして批判が起こった。