自衛隊の運用において、背広組と呼ばれる防衛官僚(文官)の役割を制服組の自衛官(武官)よりも優位とし、背広組が制服組を統制する仕組み。第2次世界大戦前に軍部が暴走したことへの反省から、戦後の日本は政治が軍事に優先される文民統制(シビリアンコントロール)を基本原則としており、自衛隊の指揮権を持つ総理大臣や防衛大臣は「文民でなければならない」と憲法第66条で規定されている。文官統制はその文民統制を防衛省内で維持するための手段の一つとされ、防衛大臣が統合幕僚長や陸海空の幕僚長に指示をする際、背広組である官房長、局長が補佐すると規定する防衛省設置法12条がその根拠とされてきた。これに対し、第3次安倍晋三内閣は2015年3月26日、背広組と制服組が対等な立場で防衛大臣を補佐することなどを盛り込んだ防衛省設置法改正案を閣議決定。改正法が成立すると、背広組の調整を経ずに防衛相が制服組のトップである統合幕僚長などに指示を出したり、逆に統合幕僚長などから防衛相に報告したりできるようになる。自衛隊の運用効率化や意思決定の迅速化などがねらいだが、制服組の権限が強化される半面、背広組の影響力は相対的に縮小するため、文民統制の弱体化につながるとする懸念の声も上がっている。