旅券(パスポート)の発給や効力などに関して必要事項を定めた法律。1951年11月に公布された。外国への旅行などで用いられる一般旅券や、国の用務のために海外渡航する者に発給される公用旅券について、その発給や交付、記載事項、有効期間、失効、違反した場合の罰則などが定められている。日本国憲法は、海外への移住や渡航の自由を認めているが、旅券法13条では、渡航先に入国を認められていない者や、犯罪で訴追されている者などに対して、外務大臣や領事官が旅券発給を拒否する権限が認められている。同条では、「著しく、かつ、直接に日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある」者に対しても旅券の発給を拒否できるとされており、東西冷戦下の52年、旧ソ連で開催された国際会議に帆足計元日本社会党衆議院議員が出席しようとした際に、この条項が適用されて旅券が発給されなかったことが問題になった。また、同法19条では、「旅券の名義人の生命、身体又は財産の保護のために渡航を中止させる必要があると認められる場合」には、旅券の返納を命じることができるとしている。2015年2月には、過激派組織「イスラム国」(IS)が活動するシリアへの渡航を計画していた男性フリーカメラマンが、同条項を根拠として旅券返納を命じられた。外務省によると、この規定による返納命令が出されたのは初めてのことだという。