東京都と周辺3県の高齢化に伴う医療、介護の問題について、民間有識者らでつくる日本創成会議(座長・増田寛也元総務大臣)の首都圏問題検討分科会がまとめた提言。人口減少により存続が危ぶまれる全国896市区町村を消滅可能性都市と指摘した2014年5月の提言に次ぐもので、15年6月4日に公表された。15年6月の提言ではまず、国立社会保障・人口問題研究所の人口推計をもとに東京圏(東京都、埼玉県、神奈川県、千葉県)の将来的な高齢化について試算。高度経済成長期に東京圏に流入した住民の高齢化が進むことで、25年には東京圏における75歳以上の後期高齢者が15年に比べて175万人増加し、全国の増加数の3分の1を占めると指摘した。それにより、東京圏は入院需要は20%前後増(全国平均約14.1%)、介護需要は40~50%増(全国平均約32.3%)と、ともに全国平均よりも高い増加率となる。半面、医療、介護の受け入れ能力が低く、25年には特別養護老人ホームが推計13万床不足するなど、深刻なサービス不足が生じるとしている。提言では、その対策として高齢者の地方移住策を掲げ、受け入れ能力が高い候補地として北海道函館市や福岡県北九州市、大分県別府市など、26道府県41地域の名を挙げた。また、移住環境を整備するための対策案として、相談窓口の設置や移住費用支援なども盛り込まれた。そのほか、外国人の介護人材やロボットの活用、団地再生による高齢者の集住化、空き家の医療介護拠点への転用なども提言している。提言をめぐっては、実現性、効果に対する疑問の声や、移住先候補地とされた自治体からの異論が出るなど、各方面に波紋を投げかけている。