原子力発電所などの事故が発生した場合の国際的な損害賠償の枠組みを定めた条約。正式名称は「原子力損害の補完的な補償に関する条約」。1986年4月のチェルノブイリ原子力発電所事故をきっかけに、原発事故などの責任や賠償についての枠組み作りが国際原子力機関(IAEA)で進められ、97年9月に採択された。同条約は、事故発生国に円換算で約470億円(2015年1月時点)以上の賠償を義務づけ、その額を超えた場合には締約国の拠出金で補完する仕組み。原則として、事故発生時の賠償責任は、過失の有無を問わず原子力事業者が負うと規定し、原発メーカーは免責される。また、事故に関する賠償訴訟の管轄は発生国に限られる。条約は、5カ国以上が締約したうえで、締約国の原子炉の熱出力が合計40万メガワット以上という条件が満たされれば発効となる。採択後、長らく未発効のままだったが、2015年1月に日本政府が署名したことで合計出力が基準を上回り、同年4月に発効することが決まった。同条約締結まで、日本は他の国際的な原子力損害補償の枠組みに加わってこなかったが、11年3月の東京電力福島第一原子力発電所事故を契機に加盟への動きが進んでいた。条約加盟により、福島第一原発の廃炉作業に海外企業が参入しやすくなることや、原発の輸出時に日本メーカーが責任を負うリスクが低減されることなどのメリットがあるといわれている。