国連人権委員会の1994年3月の決議に基づき、女性に対する暴力、その原因と結果について調査が行われ、96年2月に同委員会に提出された報告書。スリランカ出身の法律家ラディカ・クマラスワミが特別報告者を務めた。その内容は、女性への家庭内暴力や性犯罪、虐待などの実態や、各国政府の対応などを列記したもので、44カ国が情報・データ提供の要請に応じている。日本では特に、報告の付属文書である第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題についてまとめた「戦時における軍の性奴隷制度問題に関して、朝鮮民主主義人民共和国、大韓民国及び日本への訪問調査に基づく報告書」に注目が集まった。主に、韓国、北朝鮮、日本で同氏が実施した元慰安婦などからの聞き取り調査に基づいた同報告書は、慰安婦は強制連行された「性奴隷」であり、日本政府には法的、道義的責任があると指摘。そのうえで、日本政府に対し、被害者への謝罪や補償、関係者の処罰などを行うよう勧告した。